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『プロフェッショナルの条件 いかに成果をあげ、成長するか』

『プロフェッショナルの条件 いかに成果をあげ、成長するか』
P・F・ドラッカー
上田 惇生 編訳

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第245回の今回は「将来、自分が医師としてチームを率いる立場になるのならば、自分は今何を勉強しておくべきか?」という悩みを相談した時に紹介していただいたこちらになります。
『はじめて読むドラッカー【自己実現編】』とあるように、非常に読みやすく書かれた一冊です。
ドラッガー先生はこれからの時代を「ポスト資本主義社会」と捉え、そこで働く一人一人がどうやって成果を出して成長するかを説きます。
プロフェッショナルとして仕事をしたいと思っている全ての人にオススメしたい一冊です。


簡単な内容紹介
冒頭でも示しましたが、現代とは「ポスト資本主義社会」であるといえます。
これまで考えられてきた「資本家」と「労働者」の関係は終わり、全ての労働者がそれぞれに責任を持ち、それぞれの成果を出すことが求められるのです。
「為すべき者が為すべきを為す」現在の社会における仕事をすることの意味とは何か?
自分自身をマネジメントするとはどういうことか?
意思決定をして、組織を導くとはどういうことか?
そして、どうやって自己実現を目指すのか?
一流のプロフェッショナルとは何か?その真髄に迫る一冊です。



「資本主義」とは、「資本家がその莫大な資本をもとに設備投資を行い、労働者の労働力を買って商品を生産し、その商品を売ることで富を生み出す経済システム」だとアザラシは認識しています。
このシステムにおいて「労働者」とは単純にその労働力を資本家に購入される側の人間であり、いわば代替可能な歯車の一つでしかありません。
では、例えば医療の現場である病院を「資本主義」的なシステムとして解釈するとどうなるでしょうか?
「医療法人や自治体などが資本をもとに病院という施設を整備し、そこで働く医療スタッフを労働力として雇い、医療を成立させるシステムである」となるのでしょうか。
さしずめ、そこで雇われている医療スタッフもまた「労働者」だとするなら、その労働力は代替可能な歯車の一つでしかないのでしょうか?


この解釈モデルは、かなり違和感があります。
病院に雇われる専門職には医師以外にも看護師や薬剤師、検査技師、栄養士、放射線技師、医療事務といった職業がありますが、今回は医師に限定して考えてみましょう。
その場合、病院に勤務する医師は、その労働力を病院に買われて雇われている立場にあります。
雇われている以上、病院の指示のもと、課せられた職務を全うしなければなりません。
ですが、病院は医師の何を「労働力」として買っているのでしょう?
病院は医師の何を「職務」として期待しているのでしょう?


医師の持つ「労働力」とは、すなわち専門家としての「専門知識」であると本書は説きます。
医学全般の知識だけでなく、その医師が専門とする領域の知識も含みますし、手術や診療の技術の知識も広く「専門知識」に含めることができるでしょう。
そして、その「職務」とは、「専門知識」を持って成果につなげること、つまり治療成績の向上や医療の質向上につなげることです。
とはいえ、医師のように「専門知識」を「労働力」として働く「知識労働者」は単独では成果をあげることができず、所属する「組織」への貢献なしには成果につながりません。
例えば、腕の良い外科医が手術の執刀医としての知識を持っていたとしても、手術は一人の外科医だけでは達成できません。
組織の中で周囲と協力しながらでなければ成果が出せないのです。


医師だけでなく、多くの知識に基づいて仕事をする労働者は「知識労働者」であるといえます。
「知識」そのものは「知識労働者」個人の資本ですが、その資本を成果に結びつけるたには「組織」が必要です。
だからこそ、本書はこれからの時代を「知識社会」もしくは「現代社会」と規定しているのです。
そこでは「資本主義社会」のように「雇い-雇われる」関係ではなく、個人個人が自分自身の知識をもとに果たすべき貢献に責任を持ち、成果を出して成長し続けなければなりません。
組織のリーダーはリーダー自身が専門知識を活かすと同時に、チームメンバー各自がその知識を貢献に結び付けられる機会を創出しなければなりません。
組織そのものは構成員一人一人に機会を提供してくれますが、「組織に対してどんな貢献を為すか」の基盤になる「知識」を提供してくれません。
このようなこれからの時代に、どうやって個人が「プロフェッショナル」として自己実現を達成すればいいのか?
本書はそんな着眼点で働き方の指針を示してくれる一冊なのです。
非常にわかりやすく、読みやすく書かれているので文字通り「はじめて読むドラッカー」としてオススメの一冊です。


というわけで、個人的にはこれまで悩んできた問いに対する一つの解釈を与えてくれた貴重な一冊になりました。
ご紹介誠にありがとうございました。




ちょっとだけ、僕が冒頭で書いたような疑問を抱くことになったきっかけを書いておこうと思います。


当然だと思われるかもしれませんが、医師だけに限らず医療スタッフの職務とは「患者さんの健康のために尽くすこと」です。
だとすれば、医療スタッフであればすべからく「患者さんの健康のために尽くすこと」をモチベーションとして仕事をするのが当然だと思われているのかもしれません。
では、同じ目標を掲げ、同じモチベーションを持っているのであれば、医療スタッフの数さえ集まれば自動的に病院が組織として機能し、「患者さんの健康のために尽くす」という成果をあげられるのでしょうか?
病院のトップに立つ人間は、各医療スタッフの働き方をそれぞれの職業倫理に任せ、ただ必要な人員の確保とベッド数などの施設規模を揃えてさえいれば良いのでしょうか?


僕は今までにいくつかの病院で勤務してきました。
同じ病院でも所属する部署が変わることもありましたから、所属したチームという意味ではそれなりの数を見てきたと思っています。
その経験をもとにいうのであれば、残念ながら「必要な資格を持った専門職をただ集めさえすれば医療は成立するか?」という命題に対しては悲観的にならざるを得ません。
「患者さんの健康のために尽くす」という明確なビジョンを共有しているにも関わらず、ただ人数がいるだけでは組織は機能しないのです。
人員が協調しあって仕事に向かえない為に診療できる患者さんの数は少なくなり、施設や診療科としての価値は喪失され、後継者が育たなければその組織を維持することすらできず消滅することになります。
これまでの経験からわかったことは、医療チームのを率いる立場の人間は、はっきりとしたマネジメントやリーダーシップといった統率力を持っていなければ、そのチームそのものを崩壊させかねないということです。


医師として仕事をしていれば否が応でも勤務年数を重ねていくことになります。
年数を重ねるということは、ただそれだけ時間を過ごしたというだけに留まらず、チームの中でより指導的な立場になる責任を負うということです。
チーム全体の治療成績に責任を持ち、そのチームが持っている価値を高めることに責任を持ち、後継者となるべき人材への教育に責任を持つということです。
だとすれば、僕自身もいつかはその責任を果たさなければならなくなるはずです。


こう考えたときに、自分が組織を率いる立場になった時にどんな技能や考え方を身につけておけば良いのか?というのが自然と湧いてきた疑問でした。
疑問というよりは、強迫観念と呼んだ方が良いのかもしれません。
なにせ、僕がチームを率いる立場になった時、その役割に失敗するということは、そのチームそのものを崩壊させ、ひいては施設周囲の医療そのものを崩壊させることにつながるからです。
だからこそ『医師として知っておくべきマネジメントとリーダーシップの鉄則 24の訓え』という本も読むことになりました。
(ちなみに、その本をベースに勉強したことをまとめる『医療の現場で求められる「統率力」』なんてブログを作っています)
そんな中で本書は医療の現場における医療スタッフの立ち位置やそれぞれが負うべき責任についてどう考えるかという発見ができた一冊になりました。
事あるごとに読み返してみたいと思います。


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コメント

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No title

これは私も読んでおきたい一冊ですので、早速購入しました。(しばらく順番待ちになりそうですけれど、忘れたくないので先に買いました)
私自身、ベトナムでは組織管理をしなければならない立場に立ったことで、アザラシさんが考えておられることにまさに直面してきた7年でした。そして今でもずっと正しい道を探しながら手探りで歩いているような印象です。
組織を束ねる人は、オーケストラの指揮者のような存在だと私は感じています。それぞれの楽器演奏者の持ち味(専門スキル)をしっかり引き出して、全体としての楽曲(成果)を最高のものに仕上げていく、そんな存在。楽器演奏者は、その楽器に対してのプロフェッショナル。専門知識と高度な技術を駆使して、作曲者や指揮者のイメージする(またはそれ以上)の音を奏でて、全体の楽曲をしっかり支える。
今回の本は、楽曲を支える一人一人として、どういう考え方、音の奏で方をするのが良いかを示した本かなと推測しています。
いつもアザラシさんから良い刺激を頂いています。今回も、それを感じる記事でした。
新しいブログを少し拝見しました。素晴らしい取り組みだと思いました。そして、忙しい中でも仕事の質を高めていくための努力を怠らないアザラシさんを改めて尊敬しています。

MunehitoKiri さん

コメントありがとうございます!
(返信が五月雨式になってしまい申し訳ありません。。)

組織管理をしなければならなくなったとき、どんなことを考えて、どうやって管理すればいいのか、なかなか難しいですよね。
Munehitoさんが指摘されたように、上司が部下に命令して従わせるだけの組織ではなく、オーケストラの指揮者役のように各演奏者の持ち味を活かす組織づくりを目指す必要があるのではないかと思っています。
そういう意味で、本書はそんな考え方に触れられる本でした。
是非、読んでみてください。

もう一つのブログも見てくださりありがとうございました。
自分自身の勉強用という色合いが強いブログですが、少しずつ続けていきたいと思っています。
もちろん、こちらのブログも続けていく予定です!

No title

お久しぶりです^^
お忙しいかと思いますが、体調は大丈夫ですか?
医療現場は大変かと思いますが
どうぞお体に気をつけて、乗り切ってくださいっ!

七迦寧巴さん

コメントありがとうございます!

ご心配をおかけして申し訳ありません。
僕自身の体調は大丈夫なのですが、やはり例のウイルスのおかげで何かと落ち着かず、なかなか更新もできませんでした。
なんとか緊急事態宣言も受けて収束に向かってくれれば良いのですが……。
温かい励ましのお言葉、ありがとうございます!!