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『ゾンビ襲来 国際政治理論でその日に備える』

『ゾンビ襲来 国際政治理論でその日に備える』
ダニエル・ドレズナー
谷口 功一・山田 高敬 訳

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第241回は、ちょっと毛色が変わって「ゾンビ」にまつわるこちらをご紹介します。
原題は『Theories of International Politics and Zombies』。
もしも映画のようなゾンビパニックが起こったとして、そのとき国際社会はどのようなアプローチで対策を講じるのか?という命題に国際政治理論という切り口で挑んだ意欲的な一冊です。


簡単な内容紹介
ある日突然、屍体が動き出して人間を喰らおうと行動をし始めたとしたら、世界はどうやってそんな危機に立ち向かうことになるのでしょうか?
おそらく、それぞれの国家は国際社会の一員として、来るべき未曾有の大厄災に立ち向かわなければなりません。
その時、国家の施政者、政策の立案者たちはそれぞれが信じる国際政治理論に基づいて対策案を構築するはずです。
現実主義、自由主義、構成主義といった国際関係論のパラダイムに基づき想定される対策指針と、その結果予測される帰結とは何か?
人類は果たしてゾンビ禍を克服することができるのか?
国際政治理論に基づいたシュミレーションがこの一冊の中に詰まっています。



現実の世界では絶対にありえないような事態を想定して、その時自分だったらどう行動するか、といった妄想をしたことはありませんか?
きっと誰でも同じようなことを妄想したことがあるはずです。
そう、例えばゾンビが街に現れたとしたら、とか。
街を徘徊するゾンビは生きている人間を見つけては噛みつき、肉を喰らい、ゾンビは増殖してゆきます。
その時、自分はどうやって身を守るか?
どんな武器を手にとって、どうやって戦うか?


おそらく誰もが妄想したことがあるはずです。
当然ですが、その「誰も」には国際政治学者だって含ます。
今回紹介している本書はまさにそんな「国際政治学分野で名高い学者が本気で妄想した結果」が形になった一冊です。
著者であるダニエル・ドレズナー先生はアメリカの大学で政治学分野の教鞭を執っている先生です。
ちなみに、本書の翻訳を担当した谷口先生も山田先生も日本国内の大学で研究している先生なのです。
当然ですが、「妄想」は「妄想」でも、その気合の入り方は並大抵のものではありません。


「現実主義」がゾンビ禍に対抗する「パワー」を担保しようとしたとき、どうやって国際的な勢力均衡政策を取ろうとするか?
「自由主義」はどうやってグローバルな制度を介して効率よくゾンビを駆逐するか?
「新保守主義」はどんな行動をとるのか?
「構成主義」ならばどうやってナショナリズムを超えた「安全保障共同体」を構築するのか?
そして、各国がそれぞれの政策でゾンビ対策をする時、世論はどう動くのか?
ざっと書き出してみただけでもなかなか難解な命題が並びますが、逆に言えばそれだけ実際の理論に基づいた本格的な論文になっていることがわかっていただけたかと思います。


正直に告白すると、アザラシは国際政治理論には全くといっていいほど予備知識がありませんでした。
そのため、本書で紹介されているそれぞれの理論や専門用語について完全に理解しきることはできませんでした。
本書の内容を隅々まで楽しもうと思ったら、ある程度国際政治理論に対する知識を持っている上で、その理論に基づいたジョークを真面目に楽しめるような心構えがあったほうが良いかもしれません。
あるいは、少なくとも国際政治学に興味がないと厳しいかもしれません。
ただ、あまり肩肘を張って身構えなくても良いのかもしれません。
もしもゾンビが発生したらどうするか?という妄想自体は(現実に起こってしまえばちっとも愉快ではありませんが)楽しいものなのですから。


ちなみに、本書を難解たらしめているもう一つの原因は、ドレズナー先生があまりにもゾンビ・カルチャーに対して「造詣が深すぎる」からかもしれません。
本書内で紹介されているようなゾンビ映画や小説で知っているのが「バイオ・ハザード」シリーズだけというアザラシは、終始圧倒されっぱなしでした。
逆に言えば、ゾンビ映画や小説が好きで好きでタマラン!という方にとってはきっと面白い切り口(ゾンビだけに)を見せてくれる一冊だといえるでしょう。


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コメント

非公開コメント

No title

こういう本はそそられますね。
図書館にあるかチェックします!
ゾンビに限らず宇宙人も、もし襲来してきたらどうやって暮らすかは、
わりと妄想するのが好きで、よく妄想してます(笑)
わたしの妄想はたかがしれているので、こういう本を読んで見聞を広めたいと思います!
国際政治学は知らないのですが・・・がんばる^^
なにげにゾンビは好きで、昔のメアドのドメインはzombieworld.comでしたww

>面白い切り口(ゾンビだけに)

くすっと笑いました^m^
ゾンビじゃないけど、いまはまさにコロナがそうかもしれないですね。

Re: No title

コメントありがとうございます!
僕も初めてこの本を見つけたときの衝撃が強くて、思わず手に取ってしまいました。
ゾンビや宇宙人が襲来したらどうするか?考えちゃいますよね。

>昔のメアドのドメインはzombieworld.com
それだけゾンビ好きならきっと楽しんでいただけるのではないかと思います。
国際政治学は、僕に取ってもとても難しかったのですが、良い乱読になるかもしれません。
図書館にあったらぜひ手に取ってみてください。

No title

「現実の世界では絶対にありえないような事態を想定して、その時自分だったらどう行動するか、といった妄想をしたことはありませんか?」ええ、ありますとも(笑 なんだったら、得意技といっても良いかもしれません。
電子書籍では出ていなかったようなので、すぐに読めないのが残念ですがこれは読んでみたい一冊ですね。ゾンビ映画は、初代の「ゾンビ」や「バタリアン」シリーズなど、何作かみています。バイオハザードは、第1作、第2作までプレイしただけですね。あまりに怖くて、それ以上に続ける気力が続きませんでした。
本書、「国際政治学分野で名高い学者が本気で妄想した結果」とあるので、かなりリアリティのある内容になっていると推測します。あまり現実的だと怖い気持ちの方が先に立ってしまうかもしれませんが、日本に戻ってからトライしてみます。(ちなみに私は超絶怖がりです。お化け屋敷も、乗り物タイプは頑張れば入れますが、自分で歩くタイプのお化け屋敷は怖くて入ることができません)

MunehitoKiri さん

コメントありがとうございます!

妄想するのって、楽しいですよね。
僕もお化け屋敷などは怖くて苦手で、実際にホラー映画のようなシチュエーションになったら途端に取り乱してしまうと思うのですが、妄想の中だけであればいくらでもどうすれば良いか考えることができます。
ゾンビものは「バイオハザード」くらいしか見ていませんでしたが、実は本書を読んでから映画の「ワールド・ウォー・Z」を観ました。
原作とはちょっと違うみたいなので、原作の方も挑戦してみたくなりました。

本書はもちろんジョークじみた考察ではあるのですが、政治学にどんな考え方があるのか?を勉強することができるかもしれません。
個人的には若干難しい部分もありましたが、機会があったら手にとってみてください。