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『Dr. イワケンのねころんで読める研修医指導』

『Dr. イワケンのねころんで読める研修医指導』
岩田 健太郎

dink

第227回の今回も、医療にまつわる実用書としてこちらをご紹介いたします。
2020年の通常業務が始まるまでの間に読んでおこうという企画ですので、もう少しだけお付き合いください。
今回のテーマはずばり「研修医の先生に対する教育・指導について」です。
前回とも少しテーマが被るのですが、前回はどちらかというと総論的、今回はむしろ各論的な話題が中心です。
タイトルにもあるように、非常に読み易い作りになっているので気軽に読めるのも魅力の一つです。


簡単な内容紹介
医療の現場で度々話題になるのが、「研修医の先生にどんな教育・指導をすればよいのか分からない」という教育に関する話題です。
医師は医学のスペシャリストではありますが、残念ながら教育のスペシャリストとは限りません。
教育にまつわる書籍や研修会はありますが、えてして小手先の方法論的だったり、下手をすると精神論的だったりで、必ずしも実践に則しているとはいい難い状況です。
そんな悩める指導医に向けて、「新人」指導医のオオベ先生とその上司であるDr. イワケンのコミカルな掛け合いという形式で医学教育の実践について指南をしてくれる一冊です。



上述したように、大学の医学部では医学そのものを学ぶ機会は豊富にありますが、教育の仕方を学ぶことはほとんどありません。
それは医師になってからも同様です。
「教育の作法」を系統的に学ぶ機会がなかった医師が、それでも研修医の先生を教育しなければならない立場になったとき、どうなるのか。
医療の現場ではまことしやかに使われる言葉があります。
「自分が教わったようにしか教えられない」
けれど、それが今目の前にいる一人の研修医の先生にとってベストな教育であるとは限らないのです。


偉そうに色々と書いていますが、僕自身もそんな研修医の先生への指導方法にずっと悩んできました。
過去には一度、非常に熱心に教えすぎて僕にも研修医の先生にも負担が大きくなり、結果的に一番大切なことを教えることが出来なかったという苦い経験があります。
研修医の先生への指導というのは、一方で「自分たちの診療科へのリクルート」という側面も持っているのでなんとか頑張りたいのですが、無駄に頑張りすぎても空回りするだけです。
まぁ、別に自分たちの診療科に進んでくれなくても教育することはとても大事なのですが……。
なにはともあれ、研修医の先生は一人一人異なるので一概に「こうすれば大丈夫」という定型化も難しく、これでよかったのかと反省しながら色々と試してきました。


そんな中、手に取ったのがこちらです。
実際に研修医指導に悩むオオベ先生にDr. イワケンが具体的なアドバイスをするという体裁で作られているため、非常に読み易く、かつコメントが具体的です。
研修医の先生に対する姿勢や強調すべき点を「ダメなものはなぜダメなのか」も含めて解説されています。
例えば、研修医の先生の「知識不足」を責めることは無意味です。
そもそも、いくら国家試験を合格しているとはいえ、毎日医療の現場で専門家として仕事をしてきた指導医と研修医の先生では知識の量にも質にも非常に大きな差があるはずです。
そんな前提を踏まえた上で、本当に指導すべきはどうやってその知識にたどり着くか、そしてその知識を臨床上の判断に活用するかなのです。


そもそも、指導医は指導をする上でどのような目標設定をするべきなのでしょうか。
もう少し突き詰めると、研修医の先生にどのようになってもらいたいと思って指導するべきなのでしょうか。
結局のところ、指導医が目指すべきは研修医の先生が「研修期間が終わった後に、一人でも適切な臨床判断が出来るような情報収集・思考・判断能力が身に付くようになること」なのだと、本書は教えてくれます。
だとすれば、その目的を達成するためにどうすれば良いのか?
単純に「○○の場合には診断が△△で治療法は××」と答えを教えるような指導で良いのか?
そんなはずがなく、適度に研修医の先生にも思考してもらいながら、医師として具体的にどのような思考パターンを身につけるべきなのかTeachingではなくCoachingをするというのがその本質であるべきでしょう。
もちろん、実践がなければどんな理論も絵に描いた餅でしかないので、ここから先は僕個人の課題になるのでしょうが、少しずつでも改善していきたい、そんな課題を見つけることが出来た一冊でした。


なお、上述の情報収集・思考・判断能力が身に付くような指導というのは、あまり杓子定規にやり過ぎると、結局僕にも研修医の先生にも負担が大きくなってしまうことが予想されます。
苦い経験が再びの予感……。
というわけで、程々にバランスをとりつつ、自分自身の指導スタイルを模索していきたいものです。
そんな指導医の苦悩は以前紹介した『ひとつむぎの手』のテーマにもなっています。
非常に温かみのある物語なので、こちらもオススメです。

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コメント

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No title

お仕事はいつから開始ですか?
それまでにいろいろと読むことが出来たみたいですね^^
うちのダンナさんやダンナさんの家族はお医者さんではないですが
わりと近しいことをしているので、こういう「教育」「研修」に関する苦労話や悩みはよく聞いています。

>研修医の先生の「知識不足」を責めることは無意味

これはほんとうにそう思います!
よく、飲みながらそんな話をしてますよ^^

わたしは患者の立場でしか言えませんが、やっぱり信頼出来るお医者さんが一人でも多く増えてくれると嬉しいです(笑)

七迦寧巴さん

コメントありがとうございます。
通常勤務は月曜日からですが、明日は当番があたっているので、完全なお休みは今日まででした。
そろそろお休み気分を切り替えないといけません。

「教育」「研修」に関する苦労話や悩みは本当に色々な業界で出てくるんじゃないかと思います。
どうしても自分がされたように指導しがちなのですが、より良い指導が出来るようにするためにも、もっと工夫が出来れば良いなと思っています。
患者さんから信頼してもらえる医師になる、という目的を意識して指導できるようにしたいですね。