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『遠すぎた輝き、今ここを照らす光』

『遠すぎた輝き、今ここを照らす光』
平山 瑞穂

tkih

第194回の今回は、Twitterでご紹介いただいたこちらになります。
かなり久しぶりの更新になってしまいました。
カテゴリを「お仕事小説」にしていますが、雑誌記者と石膏像職人が主人公なので、あながち間違っていないと思うのです。


簡単なあらすじ
中学生時代の同級生であった小坂井夏輝と瀧光平。
誰とも等しく優しく接する夏輝と、自身の世界にこもって孤立する光平。
正反対な性格の二人は、中学生時代にはわかり合えませんでした。
そんな二人が大人になり、偶然再会します。
大人として再会した二人は、過去を受け止め、前を向き、お互いを理解することが出来るのでしょうか。



アザラシが子供だった頃、特に小学生ぐらいの頃は、誰とでも仲良くできること、が最上級の美徳であるかのように教育されていたように記憶しています。
誰とでも仲良くできる子が良い子。
誰にでも優しくできる子が良い子。
人間は一人一人違うはずなのに、話せばわかりあえる、とでもいうような正論は確かに聞こえは良いですが、今になって冷静に考えると少し恐ろしくも感じます。


なにか一つの物を極めようと思うと、それ以外のことは目に入らなくなるものです。
特にそれが他の人にはわかってもらいにくいけれど、自分だけはわかっている、というような類いのものになると、まわりがよりいっそう余計な物だと感じてしまうかもしれません。
そうなってくると、回りの人との交流すらも億劫になってしまって、気がつくと独りよがりに自分の道だけを突き進むようになってしまうのです。
時には自分以外の全ての人間を、わかっていない側として見下すようになってしまうかもしれません。


ちょっと極端な話から始まりましたが、幼少期のアザラシはそんな二面性を持っていたように記憶しています。
あくまでも個人的な見解ではありますが、特に思春期ぐらいの不安定な子供は、ある程度「誰とも仲のよい良い子でいたい」という欲求と「自分独自の価値観を持っていたい」というアンビバレントな存在なのではないかと思っています。
そんなことを思っているアザラシからすると、本作の主人公夏輝と光平は非常に対照的な人物設定なのですが、ちょうど表裏一体の非常に「近い」存在である、と思えました。
だからこそ、理解し合えないとお互い思っているはずなのに、実は深層心理まで含めて見抜きあってしまっているという設定には、非常に納得したのでした。


当然ですが、もともとわかり合えなかった二人が徐々に理解し合い、わかり合えるようになるというのは物語として王道的ともいえる展開です。
本作においてもその、徐々に理解し合っていく過程、過去を乗り越えていく過程こそが最大の見せ場になっています。
丁寧な登場人物の心理描写と、夏輝と光平の視点が交互に描かれることで印象的に描かれる二人の気持ちの変化が、ほっこりと温かい気持ちにさせてくれる優しい物語であると言えます。
過去を乗り越えたいと思っている方、本当は逃げ出したい何かと向き合わなければならない方に、優しい温かさをくれる物語としてオススメです。


ちなみに、この本をご紹介してくださったのは『僕と彼女の左手』『左目に映る星』をご紹介してくださった方です。
三作品とも非常に優しい物語ですので、優しい男女の物語が読みたい、という方にはいずれもオススメです。
ご紹介、ありがとうございました。

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コメント

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No title

石膏像職人というのが惹かれますね。
どんなストーリーなのか興味が湧きました。
確かに小さい頃は「自分だけはわかっている」っていう考えも持っていたような気がします。
そのことで周りとは一線を引てしまうこともあったかなって思いました。

七迦寧巴さん

石膏像作りを解説したパートは、とても興味深かったです。
ストーリーもかつて反発し合っていた男女が少しずつ過去を乗り越えていく、という王道的でありながらも非常に面白い作品なので、図書館であったら是非読んでみてください。

僕も小学生高学年から中学生ぐらいまでは「自分は周りと違う」という意識を持っていたような気がします。
大人になるにつれてなくなっていきましたが……。