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『話を聞かない医師 思いが言えない患者』

『話を聞かない医師 思いが言えない患者』
磯部 光章

hiok

第190回の今回ご紹介するこちらの本、著者はなんと僕の恩師である先生が執筆した本です。
正直に告白すれば、僕自身は決して出来のよい学生ではなく、しかも最終的な進路は循環器内科でありませんでしたから「恩師」と呼ぶ資格はないのかもしれません。
とはいえ、そんな僕でも学生時代の講義や実習を思い出すような一冊でした。
初心に立ち返り、丁寧な診療を心がけようと思わず姿勢を正したくなる本書は、患者さんの力になりたいと願う医師にオススメの一冊です。


簡単な内容紹介
昨今、メディアを中心として様々な場面で目にすることが多くなった医療不信。
果ては訴訟にまで発展してしまうことすらある背景には、医師と患者のコミュニケーションエラーがある。
本来であれば「患者の役に立ちたい」という職業的本能を持っているはずの医師と、医師に相談して良くしてもらいたいと思っているはずの患者の間で、なぜすれちがいが起きるのか。
長年循環器内科の現場で患者と向き合い、一方で教授として医学生を対象に教鞭をふるっていた著者が解説する新しい医師と患者の接点とは。



上述したように、本書は僕の恩師である磯部先生が執筆した本です。
磯部先生といえば、学生に対しても非常に丁寧な講義をされる先生で、その知的で優しく人間味に溢れたお人柄は、文字通り医師の鏡として医学生からも大変尊敬されていた先生でした。
事実、卒業生が主催する謝恩会でも「ベスト・ティーチャー賞」として表彰されたことは数知れず、常に絶大な人気を誇る偉大な教育者でもありました。
そんな先生が本を執筆されていたとは、全く知らず、先日職場の後輩と話をしている時に偶然本書のことを紹介してもらったので、ようやく手に取って読んでみた、というわけです。
いかに僕ができの悪い学生だったかがわかりますね。


磯部先生といえば、非常に知的で理論的な講義をされる先生でした。
そんな先生のエピソードで僕が今でも忘れられないのは、小グループでの実習形式の授業で先生が医学生に対して聴診器を用いた聴診の方法を説明したときのことです。
まずは基本として一通り聴診器の使い方を説明した後、先生は医学生に対して
「聴診で一番大切なものは何だかわかりますか?」
とおっしゃられました(文字通り、先生は医学生に対しても丁寧な言葉で講義をされる先生だったのです)。
一瞬の沈黙の後、先生は優しく微笑んで自分の頭を指差しながら
「ここです。聴診をするには頭を使います」
とおっしゃったのです。


医学生が学ぶ医学とは、人間に起こるさまざまな生物学的事象を理論として説明する科学です。
聴診という診療行為一つをとっても、そこで得られる様々な所見に対して、所見と病態生理をつなげて診断にたどり着くための理論を身につけることが医学生には求められます。
聴診で得られる所見と病態生理・診断の間に理論的な説明付けが出来るようになると、そこに知的好奇心を抱き、もっと勉強したいと思えたものでした。
本書を読んでいても、そんな科学としての医学を専門としている先生だからこそ書ける知的で理論的な文章には、ただただ感服するばかりです。


理論的であるだけでなく、先生は非常に患者さんに対しても優しい、温かさをもった先生でした。
これも僕の個人的なエピソードになりますが、先生が脈拍のとりかたを講義してくださったことがありました。
「こうやって、直接患者さんに触れることが大切なのです」
とおっしゃいながら、僕の腕で脈拍の取り方を説明した時の、その手の大きさと温かさに、この手は確かに患者さんを癒す手だと確信したのを覚えています。
本書の中でも紹介された妊娠中にわかった心臓内の粘液腫の患者さんにまつわる診療のエピソード、特に非常に難しい決断を迫られる中で患者さんとの対話を繰り返し、治療方針を決めるまでの様々な葛藤の「物語」を語ってくださったこともありました。
今でも先生は僕の中で「心から尊敬し、目標にしたいと思う医師像」であり、そんな先生らしさを感じる本書は、医師として仕事を続けていく上での羅針盤になる一冊であることでしょう。
かなり個人的な内容の記事になってしまいましたが、患者さんの力になりたいと願っている医師の方であれば間違いなく響くオススメの一冊です。


なお、本書は医師向けに書かれているのですが、一方で患者さんの立場になる方にとっても読みやすい一冊となっています。
専門用語も説明されながら書かれていますし、一部は患者さんになる立場の方に向けて書かれた内容になっていたりします。
医師が普段どんなことを考えながら診療しているかがわかれば、コミュニケーションも取りやすくなるかもしれません。
医師にオススメと書きましたが、医師でないかたにもオススメしたい一冊です。
誰でも、病院で医師の診察をうけることはあり得るのですから。


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コメント

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No title

すごい!たくさん読んでいますね。
現在、お盆で帰省中です。もちろん本も全然読めていません^^;
お盆が終わって落ち着いたらまた改めて訪問させてください!
猛暑続きなので、体調には気をつけて下さいネ。

七迦寧巴さん

お盆の帰省も色々と大変ですよね。
まとまった休みがあるようで以外と思った通りには過ごせないのが大型連休の悩みだったりします。

暑い日々や台風などありますが、体調には気をつけて夏を乗り切りたいですね。
今後ともよろしくお願いいたします。