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『歌舞伎町はなぜ<ぼったくり>がなくならないのか』

『歌舞伎町はなぜ<ぼったくり>がなくならないのか』
武岡 暢

nkbn

第182回の今回は、Kindleで読んだこちらをご紹介します。
甘い言葉に惹かれて入ったお店で、結局は法外な値段を請求されるぼったくり。
そんなぼったくりを社会という構造の問題として捉え、ぼったくりが起きる背景を学術的に分析した実に興味深い一冊です。
(カテゴリが微妙ですが、ご容赦ください)
→2019/07/30 カテゴリを「教養」に修正しました。


簡単な内容紹介
ネオンのきらめく眠らない街、東洋一の歓楽街、歌舞伎町。
その一角で繰り返される犯罪「ぼったくり」は2010年代前半に頻発していました。
なぜ、歌舞伎町ではぼったくりはなくならないのか?
このわかるようでわからない命題を出発点として、実地での観察調査やインタビュー調査に基づいて書かれた知的好奇心をくすぐる一冊です。



アザラシが学生だった頃、飲み会と言えば新宿東口近辺で行なわれることが多かったように思います。
当時はスマートフォンもなく、携帯電話で見ることが出来るサイトもたかが知れていましたから、クーポン付きのフリーペーパーを駆使して色々と探していました。
ただ、歌舞伎町のディープなエリアには意図的に近づかないようにしていました。
学生の身分で近寄るには、仄暗くて、怪しく、やはり怖いイメージがあったからです。
結局、当時植え付けられたこの「怖い」というイメージはアザラシの中で払拭されることはなく、いまだに歌舞伎町には近寄ることができずに、新宿近辺で食事をするとしても西口方面または南口周辺で食事をすることが多くなってしまいました。


では、なぜ歌舞伎町は「怖い」のでしょう。
アザラシもふと考えてみたのですが、やはり「何も知らずに近づくとぼったくりにあうのではないか」と思ってしまっているからなのです。
ただ、そもそも論としてぼったくりにあうためには「客引きなどの声かけに反応して安いと思われる店に入り」「そこで法外な値段を吹っかけられ、脅される」という一連のシークエンスが必要になります。
したがって、冷静に考えれば客引きの声に耳を貸さず、明確な目的を持って通り抜けるだけならば歌舞伎町も怖くはないはずなのです。
アザラシが抱いていた「怖い」という印象もまた、漠然とした実体のない不安に近い印象であったといわざるを得ません。


前置きが長くなりましたが、本書が出発点とするのもまた、そんな漠然とした「なぜ歌舞伎町ではぼったくりがなくならないのか?」という疑問です。
しかし、そんな疑問も「社会学」という学問の中で紐解けば、あら不思議。
非常に興味深い、ぼったくりを生む社会という構造の特徴が見えてくるのです。
本書ではそもそもぼったくりに関わる法律や取り組みの難しさを説明した上で、歌舞伎町の特徴を炙り出し、「なぜ」という疑問に結論としての答えを導きだします。
もともとは武岡先生の博士論文だったという背景もあり、理論的でありながらも非常に読みやすい文章の展開はさすがの一言。
導きだされる考察と結論には、思わずなるほどと頷かずにはいられません。


確かに、正体を攫むことが出来ない謎ほど怖いものはないのかもしれませんが、正体さえ知ってしまえば「幽霊の正体見たり枯れ尾花」というやつなのでしょう。
恐ろしい「ぼったくり」でさえも、その恐ろしさを生む背景を認識してしまえば、過剰に怖がる必要もないはずです。
というわけで、アザラシもまた過剰に怖がることをやめることにしました。
「ぼったくり」という行為もまた、歌舞伎町という街で生き抜く人間の必然として導きだされる行動パターンの一つに過ぎないのです。
非常に大袈裟に表現するとすれば、本書は人間の知性が漠然とした恐怖に打ち勝つ瞬間を味わえる一冊であるといえるでしょう。


ところで、近年歌舞伎町では「ぼったくり」が激減しているのだそうです。
この辺りは武岡先生が執筆した最近の書物に書かれているそうなので、近日中に読んでみたいなと思っています。
新進気鋭の社会学者、武岡先生のますますの活躍に注目ですね。

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コメント

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No title

母の学生時代の友人が歌舞伎町でお店をしていたこともあり
大学時代のわたしは歌舞伎町の怖さをさほど知らず、その店でバイトしてました^^;
のちに、お店があった風林会館で発砲事件もあったので、そのときはさすがに
裏の世界が近くにあったんだと実感しました。
たしかに男の人はぼったくりに会うのは怖いですよね。
すっかりオバサンになった今は、歌舞伎町は遠い遠い存在になってしまいました(笑)
ぼったくりを生む社会という構造、興味があります^^

七迦寧巴さん

恐らくお母様のご友人がされていたお店のように、普通に楽しめるお店も多いのではないかとは思っています。
それでも裏の世界が近いからこそ、気がついた時には事件に巻き込まれているというのが一番怖い気がします。
ぼんやりと居酒屋だと思って入ったお店がぼったくりのお店、ということもあり得るかもしれないと思ってしまいますし。

興味を持って頂けたように、なぜ?という探究心を持って原因を解き明かそうとするところに社会学の面白さがあると思いました。
構造の問題については実際に本を読んで頂くとよくわかるのですが、きっとなるほどと思って頂けるのではないかと思います。
オススメの一冊です。
是非読んでみてください。