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『僕と彼女の左手』

『僕と彼女の左手』
辻堂 ゆめ

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第179回の今回は、Twitterでご紹介いただいた、甘く爽やかな恋愛ものであるこちらをご紹介いたします。
辻堂 ゆめ先生といえば、以前『片想い探偵 追掛日菜子』をご紹介しました。
『片想い探偵』はポップでコミカルな展開ながらも、緻密に練られたミステリとしての魅力も堪能できる作品でしたが、そのミステリ的な巧さは本作でも光っています。
少女漫画のような甘い気持ちに浸りつつ、ミステリのような「謎が解けたときのすっきり感」も堪能したい、という方にこそオススメしたい一冊です。


簡単なあらすじ
医学部生の主人公は、幼少期のトラウマが原因で、医師になることを諦めようとしていました。
そんな時、偶然さやこという女性に出会います。
さやこは生まれつき右手が動かせないというのですが、偶然見かけたピアノを左手だけで演奏してみせます。
その演奏に魅せられた主人公は、彼女とのとある秘密を知ることになるのでした…。



本ブログの初期にも宣言していましたが、アザラシはこう見えて恋愛ものを読むのが好きです。
好意を抱き合った二人の人物が、その揺れ動く気持ちに翻弄されつつも想いを強めていく様子とか、想いを伝えられずに煩悶しつつも徐々に距離が詰まっていく様子とか、そんな「甘い」展開が好きだったりします。
最近の言葉でいうと、「尊い」というのでしょうか。
Twitterでも、そんな恋愛もの創作漫画を読ませて頂くのが好きで、ついついタイムラインを追いかけてしまうことがあります。


まぁ、アザラシの嗜好の話はどうでも良いのですが、本作もまたそんな「尊い」恋愛ものであるといえるでしょう。
医師を目ざしていたにも関わらず、とある理由でその夢を諦めようとしている主人公。
かたや、右手を動かせなくてもひたむきに自分の夢のために前をむくさえこ。
そんな真面目で純粋な二人がお互いに惹かれ合っていく様を「尊い」といわずして何といえばよいのでしょう。
丁寧で、優しく、それでいて非常に不器用な二人の気持ちの動きは、まぶしくなる程の爽やかさです。
爽やかなクリームソーダのような甘さの恋愛ものを読みたい、という方にはまず間違いなくオススメ出来る一冊です。


もちろん本作の最大の魅力は物語そのものの「尊さ」だとアザラシは思っているのですが、その一方で展開や伏線のはりかたという技巧的な側面も重要なポイントだと思っています。
いわゆるミステリではないので重大な事件が起こるわけではありません。
ただし、物語の序盤にはられた伏線は、中盤以降徐々に明らかになり、最終的には「そんな謎が隠されていたのか」という驚きとともに着地します。
この巧さ、さすがです。
詳細はネタバレにならないように敢えて書きませんが、『片想い探偵 追掛日菜子』でも魅せた辻堂先生の確かな構成力にますます魅せられることでしょう。


ところで、本作の主人公は医学生で、もう一人の登場人物であるさえこは左手だけでピアノを演奏する女性です。
そんな二人の物語には当然のように「医学」や「ピアノ」にまつわる表現が出てきますが、これがまた非常にリアルで、恐らく辻堂先生ご自身が相当に情報を集めて書かれたのであろうと思われます。
特に、ピアノを演奏するシーンはまるでその音色が聞こえてくるようにリアルで、思わずうっとりする程です。
この緻密に練られた構成と、バックグラウンドまでもリアルに表現する文章力こそ、辻堂先生のすごいところだと思うのです。
他の作品も是非読んでみたいですね。


というわけで、ピアノの音色が聞こえる程のリアルな表現と胸がキュンとするようなまぶしい物語、さらには緻密に練られた構成も楽しめるという非常に大満足な一冊でした。
爽やかで甘い物語を読みたい、という方にオススメですね。
ご紹介、ありがとうございました。

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コメント

非公開コメント

No title

アザラシさんのオススメする恋愛ものは、
わたしもわりと好みなものが多いので参考になります^^

そうそう。恋文の技術も読みましたよ。
最初はクスクス笑っていたのですが、だんだん声に出して笑って読んじゃいました(笑)
さすが森見先生、いろいろな文体で、しかもときには唸ることを書くので凄いわーーと感心しながらも、やっぱり笑って読みました^m^

七迦寧巴さん

コメントありがとうございます。
本作はかなり爽やかな恋愛ものなので、オススメですよ〜。

『恋文の技術』も読んでくださったのですね。
ありがとうございます!
笑っちゃいますよね。
あのコミカルながらも、時に鋭く本質を突くあの文体、読んでいて楽しくなります。