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『竜の花嫁』

『竜の花嫁』
風野 湊
表紙イラスト:そぞら

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第173回の今回は、前回の宣言通り、風野 湊先生の長編作品であるこちらをご紹介いたします。
言葉の使い方が非常に美しく、アザラシが注目している風野先生。
その風野先生が執筆した、少しダークな残酷さを秘めたファンタジー長編ということで、その世界観にどっぷりとつかることができる一冊です。


簡単なあらすじ
守り神として祀られる竜がいる世界。
竜の庇護を受けている村では、願いを叶えるために「花嫁」として若い娘を竜に捧げる風習があった。
生け贄に捧げられれば、竜に喰われてしまうという「花嫁」。
そんな「花嫁」にされた彼女は、村を激しく憎むのだが…。



ちょっとダークな残酷さを秘めた美しいファンタジーは、アザラシの大好物です。
昔のゲームで恐縮ですが、2001年に発売された『ICO(イコ)』はまさにその典型で、生け贄にされた少年と城に捉えられていた少女の物語でした。
作中であまり多くが語られないにも関わらず、その非常に美しいビジュアルと、とにかく「手を繋いで、逃げる」というストーリーに夢中になって、繰り返し遊んだ記憶があります。
『ICO』は宮部みゆき先生によって小説化もされていますから、いつか読んでみたいですね。


完全に脱線しましたが、本作もそんな残酷さを秘めた作品です。
なにせ、「花嫁」とは要するに生け贄のこと。
明らかな理不尽を前に花嫁が村を憎まないはずがありません。
とはいえ、そのまま恨みつらみを抱えたまま竜に喰われて終わってしまえば、物語としては成立しないのも事実。
困難な状況に立ち向かわなければならないからこそ、登場人物の力強さや世界の美しさが際立つのです。


ただ残酷な物語だけでは心を打つ物語にはなりません。
本作の面白さは竜の設定にあります。
本来なら人を喰うはずの竜は、なぜか人間を喰う事を辞めていました。
この結果、竜と花嫁の間に対話が生まれ、花嫁が村に対して抱く感情も、竜に対して抱く感情も徐々に変化していきます。
徐々に変化していく花嫁の感情と、動かざるを得ない状況の変化で、物語は結末に向かって急速に加速することになるのです。


そんな物語そのものの面白さもさることながら、竜や花嫁の息遣いが聞こえてくるかのような描写の緻密さも魅力です。
異世界を確かな説得力で描くためには、世界設定そのものも大切だと思いますが、読む人をそっくりそのまま異世界に引き込むかのような文章そのものの力も大切だと思っています。
本作においてもその言葉の力は存分に発揮されており、アザラシは見事に物語の世界を堪能する事ができました。
まるで旅をするかのように物語を味わうことができる、風野先生らしい作品を長編で読みたい、という方には是非オススメしたい一冊です。


というわけで、風野先生の作品を連続でご紹介したわけですが、風野先生は旅行記も執筆されています。
そちらの方も近々読んでみたいですね。
読みたい本が沢山あるのですぐには読めないかもしれませんが…。

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