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『紙飛行機に眠る月』

『紙飛行機に眠る月』
風野 湊

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第172回の今回は、以前もご紹介した風野 湊先生の短編集であるこちらです。
儚くて美しい幻想的な世界を見事に謳い揚げる、言葉の使い方が非常に印象的な一冊。
流麗で耽美、抜群の言葉選びのセンスに酔いたい、という方にこそオススメです。


簡単な内容紹介
表題作である『紙飛行機に眠る月』を含んだ9編の短編がおさめられた短編集です。
『紙飛行機に眠る月』では、「空を飛びたかった」という夢をもったノートのために書かれた、とされる物語が語られます。
古い紙を紙飛行機にして飛ばす紙飛行機ターミナル。
東京の上空を飛ぶ数千、数万の紙飛行機。
そんな幻想的なイメージが温かい言葉で描かれます。



というわけで、『呼吸書房』様でリンクを辿り、アザラシが注文した風野先生の作品シリーズから、幻想短編集Iと銘打たれたこちらです。
その『幻想短編集』の言葉が示すように、幻想的なイメージを詩のように描写する、言葉選びのセンスが最大の魅力でしょう。
何と言っても『紙飛行機に眠る月』というタイトルから、非常に印象的です。
他の作品では『新月をグラスに注いで』というタイトルもあるのですが、これもまたタイトルからして想像を掻き立てられるような、非常にインパクトのあるタイトルだと思います。


もちろん、物語としての設定の面白さも秀逸で、「空を飛びたかった」というノートのための物語、だったり美容師の女性と透明人間になった少女の物語だったりと、ファンタジー的な要素が強い作品はあらすじを読んだだけでも気になるような魅力がありますよね。
特にアザラシのお気に入りは『新月をグラスに注いで』で、透明人間というテーマをここまで美しい物語に仕立て上げた、そのストーリーテラーとしての手腕に舌を巻きました。
この近づきすぎず、離れすぎず、儚いようで確かな力強さを感じさせる言葉使いと相まって、確かな世界観が立ち上がります。
前回紹介した『永遠の不在をめぐる』よりも早期に執筆された作品だと思われますが、この頃から確かな物語力が光っていたのだと、アザラシは唸らずにはいられませんでした。


もちろん、非常に短い作品もおさめられています。
そういった作品でこそ、言葉選びのセンスに酔いしれたいもの。
アザラシ的には『少女ドーリィ』での耽美な世界観や、『青の国』のSF的な要素がありつつ温もりを感じさせる文体が好みです。
『花束マダム』では物語としての結末は曖昧でも、だからこそ想像が膨らむような言葉が敢えて選ばれていて、さすがと思わずにいられませんでした。


儚くても美しい異世界を高らかにに謳い揚げる、吟遊詩人の歌声のような一冊です。
読んでいるうちに異世界を旅しているかのような錯覚に陥る本書もまた、確かな言葉選びのセンスがなし得る言葉の魔術の結晶と呼べるでしょう。
なんだか気になるぞ、という方には是非是非オススメしたい一冊です。


アザラシが注目する風野先生ですが、ここまでくると是非長編作品も読みたくなります。
と、いうわけで次回は長編『竜の花嫁』を読んでみたいと思います。
楽しみですねぇ。

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コメント

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No title

これは惹かれます。
竜の花嫁も面白そうですが、うちの区の図書館を調べたら
風野湊さんの本は扱ってませんでした><
リクエスト出しちゃおうかな^m^
やっぱり先に短編週の本作から読んだ方がいいでしょうかね?

七迦寧巴さん

すでに他の記事を読んでくださっていると思うのでご存知かと思いますが、風野先生の著作は書店や図書館には取り扱いが無いのです。
記事の中にあるリンクを辿って頂くと、風野先生のホームページから通販で申し込むこともできますが。

言葉選びのセンスが本当にすてきな作家さんなので、是非読んでもらいたいです。